大豊さんとイチロー- TAIHOH & ICHIRO

2006年 WBCアジアラウンドで打席に立つイチロー大豊さんの話
2006年 WBCアジアラウンドで打席に立つイチロー
大豊さんの話

イチローが2019年3月21日に行った引退会見で、記者から最後に「孤独感」について問われ語ったことが反響を呼び、特に在外日本人から共感の声が上がったことがありました。

アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと、アメリカでは僕は外国人ですから。このことは、外国人になったことで人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることができたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。

孤独を感じて苦しんだこと、多々ありました。ありましたけど、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと今は思います。だから、つらいこと、しんどいことから逃げたいというのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気のある時にそれに立ち向かっていく。そのことはすごく人として重要なことではないかと感じています。

海外で働く孤独から得られるもの。イチロー会見に在外日本人が共感したこととは
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イチローのこの言葉でわたしが真っ先に思い出したのは、2015年1月18日に大豊さんが亡くなったときのイチローが出したコメントでした。

「昨シーズン中に2回ほど話し、今オフには必ず会おうと約束していた。人の心の痛みを察することのできる優しい方で、僕の大好きな先輩の一人だった。ただただ残念だ。ご冥福をお祈りすることしか出来ないことが悔しい」

当時このコメントを見て、イチローも大豊さんとの会話で心の痛みを察してもらうようなことがあったんだと少しドキッとしたのですが、それが一体どんな会話だったかは知るよしもないと思っていました。

けれども、このイチロー引退会見の最後の言葉でやっと初めて少しだけつながったような気がします。台湾から日本に渡りプロ野球選手になるため苦労した大豊さんが察したであろうイチローの心の痛みというのは、イチローが渡米後に感じた外国人としての孤独感や心境の変化への戸惑いとかそういうものだったのかもしれないと思いました。

そんな勝手な想像ですが、大豊さんを通して人間イチローにとても共感でき、大豊さんの人の心を慮る優しさをあらためて思い出すことができたのは、思いがけないプレゼントのような嬉しさでした。長くプロ野球ファンをやっているとこういうこともあるのかと思いました。

2006年 WBCアジアラウンドで打席に立つイチロー(撮影・筆者)

2006年 WBCアジアラウンドで打席に立つイチロー(撮影・筆者)

それにしても大豊さんとイチローが二人でどんな会話をしていたのか、ますます興味が尽きません。きっと常人には分からない野球の奥深い話から、大豊さんの髪の毛の話までいろいろ楽しくおしゃべりしていたのでしょう。

そういえば、わたしは大豊さんに「一塁守ってるときにランナーと何しゃべってるんですか?」と聞いてみたことがあって、大豊さんは「挨拶。一塁はイヤでも人が来るから楽しいよ、外野はつまんない。」とニヤッと笑っていました。

イチローは中日スポーツの記者に大豊さんとの思い出について聞かれて、こう答えています。

「イチローは誰のために野球をやってるの?」と聞かれたことがあります。大豊さんは「俺は自分のためにやっているよ」と話していました。今も、あの言葉が忘れられません」

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